設立前夜

 1983年、市内初の市民オーケストラとして発足した八王子フィルハーモニー管弦楽団の活動は徐々に軌道に乗ってきていました。年2回程度の定期演奏会に加え、学校コンサートの他JR八王子駅コンコースでの「駅コン」など地域の要請に伴う演奏活動も活発に行っていました。

 そんななか、89年9月にNTTの運営するコミュニティ施設「ポピンズ」開設1周年を記念した「ひろがれ歌の輪コンサート」というイベントが企画されました。このイベントは作曲家川崎祥悦さんの企画の元、御子息の川崎絵都夫さんに編曲など全面的に協力いただき、大変盛況な企画となりましたが、この時に管弦楽団が演奏を担当し「八王子歌の輪合唱団」が公募されました。

Tepco市民の第九と合唱団結成

 1991年に東京電力多摩支店との共催で「市民の第九」の企画が持ち上がります。それまでは合唱連盟の主導による「第九」イベントは開催されておりましたが、4楽章のみの演奏、伴奏も吹奏楽団であったりというものでした。そこで、八王子フィルハーモニー管弦楽団を核に第九全曲を取り上げる本格的な演奏会の企画が持ち上がり、東京電力のバックアップの下、92年9月に実現しました。
 このとき「ひろがれ歌の輪」の参加者に、新たに公募されたメンバーを加え約220人の合唱団が編成されました。指揮に山岡重信先生を迎え、満席の八王子市民会館に歓喜の声が響き渡りました。


 演奏会後その余韻が残る中、参加者から今後も感動的な舞台をつくっていきたいという希望が湧きあがり、今後も活動を続行しようという意見が大勢を占めました。
そこで翌93年5月、八王子フィルハーモニー合唱団として結団式を行い正式に活動を開始しました。
最初の演奏会は、結団前から準備を進めていた「カルメン」。演奏会形式の公演で、ソリストに第九同様田中三佐代さんをはじめ二期会の歌手を中心に配置し多くの観客を魅了しました。この後、間に団内指揮者による小演奏会をはさみながら管弦楽団の協力により第九の再演、モーツァルトの「レクイエム」を管弦楽団の常任指揮者、寺嶋康朗先生の指揮で上演をしました。

日独交流コンサート

 管弦楽団設立15周年をひかえ、また合唱団の活動も軌道に乗って来たこともあり、八王子フィルハーモニー管弦楽団・合唱団後援会の発案で管弦楽団、合唱団が協力して記念事業を企画する事になり、ヨーロッパのアマチュアオーケストラ協会の会長のアドバイスもあり、ドイツのザクセン交響楽団ケムニッツとのコラボレーションが1999年9月に実現しました。受け入れには後援会の村内道昌後援会長((株)ムラウチ会長)の絶大なバックアップのもと、逗留場所となった大学セミナーハウスをはじめ地元企業からの大きな支援を頂き、ドイツからは40名近くのメンバーを迎える事が出来ました。来日したメンバーは約一週間の間、練習の傍ら八王子、東京を見て回り、また一部のメンバーはホームステイも行い、団員同士の交流を深めました。いち演奏会としてはもちろん、八王子とケムニッツという都市同士、ひいては日本とドイツの文化交流として、大変大きな意義のあるものだったと思います。
 成功裏に終わった演奏会の後、ドイツ・ザクセン交響楽団ケムニッツとの交流は続きます。2011年に予定されていた3回目の日独交流演奏会が東日本大震災等の影響で中止になり、その後残念ながら大きな催しは予定されていませんが、団員レベルでの交流は今も続いています。

角先生を迎えて

 日独交流演奏会の後、2001年に10周年記念の演奏会を管弦楽団をバックに行いました。03年には管弦楽団の20周年30回記念定期演奏会に女性合唱が「惑星」のサポートで参加しました。この記念定期にはケムニッツのメンバーも再来日し盛り上げてくれました。また04年には日本の女流指揮者の草分け的存在である松尾葉子先生の指揮で、「第九」を再演しております。

 管弦楽団の指揮者体制の変更に伴い、合唱団の指導体制も変わりました。
 それまで管弦楽団のオーケストラトレーナーを務め、02年より指揮を担当するようになった角 岳史先生です。
 角先生は管弦楽だけでなく、とりわけオペレッタについては東京オペレッタ劇場を主催するなど精力的に活躍しており、そのフランクな性格とユーモアあふれる指導で、合唱団をぐいぐいひっぱり、歌唱のレベルも飛躍的に向上しました。

 06年にはモーツァルトの作品中心に南大沢で活動をしていたアンサンブル“アマデウス”TAMAとの共演でモーツァルトの戴冠ミサを、12月には合唱団の単独公演ではありましたが、市の後援も得てゲストプレーヤーも豊富な演奏会となった「君に届けたい愛のコンサート」、翌07年は管弦楽団のファミリーコンサートに共演をしました。

 08年はケムニッツのメンバーが三度来日、2回目の日独交流演奏会が開催されました。今回は急遽ケムニッツ側の指揮者が来日できなくなるというアクシデントはありましたが、30名近いメンバーが約1週間滞在し、演奏だけでなく様々な形での交流を果たしました。

20周年と運営スタッフの世代交代、そしてこれから

 2011年、八王子の新しい文化の拠点、オリンパスホールがJR八王子南口にオープンしました。直前に起こった東日本大震災により、一時は危ぶまれましたが、無事4月にオープンし、合唱団は管弦楽団とともに第九の演奏会でオープニングに華を添えました。この年の夏に予定されていたケムニッツの来日は中止になり、その代替えで震災チャリティーとして東北の演奏者を招き、ハートフルシンフォニーという演奏会を開催しました。

 翌12年、合唱団は20周年をむかえ、自主公演として、ヘンデルの大曲、メサイヤを演奏しました。今回はバッハのマタイ受難曲さながらに、朗読でストーリーを附ける形式を試み、好評価をいただきました。オーケストラはハートフルシンフォニーにつづき、管弦楽団をはじめこれまで共演した楽団のメンバーで構成される八王子楽友協会管弦楽団がつとめました。
 この演奏会で、ここまで合唱団の活動を率いてきた立川冨美代団長をはじめとした運営スタッフの引退が発表されました。立川団長はじめスタッフは翌3月の「音楽の森」コンサート(八王子市学園都市文化ふれあい財団設立20周年記念行事の一環)をもって一線を退きましたが、20年もの長期にわたった尽力と成果に対し、惜しみない賞賛が送られました。

 新しいスタッフにより13年9月の西本智美先生のカルミナ・ブラーナへの賛助出演を経て、14年7月、フォーレの「レクイエム」の主催演奏会が開催され、合唱団は新しい一歩を踏み出しました。
 そしてこれからも、私たち八王子フィルハーモニー合唱団は、アマチュア合唱団として研鑽を重ね、音楽同好の喜びを高揚し、演奏活動を通じて地域に貢献することを目的として活動してまいります。
(2014年8月)